「私たちの10年と未来への対話」宮城大学の震災10年事業

震災から10年が経過する今日,私たちは何を振り返り,何を学び取っていくべきなのでしょう。一歩一歩,生活再建や産業再生の努力を続けてきましたが,近年,新たなまちづくりの息吹も感じられるようになってきました。

「創造的復興」が大きなテーマとなり,政府,宮城県,自治体がその実現に向けて様々な施策を推進してきましたが,宮城大学は常に,自治体や住民に寄り添い「地域に根差した大学」として,どのような貢献ができるのか,共に挑戦を続けてきました。震災をきっかけとした“学び”や“気づき”,これらは「地域フィールドワーク」や「コミュニティ?プランナープログラム」などに代表される,本学の様々な地域実践教育に活かされています。大震災を共に経験してきた私たちが,何を感じ,何を学んできたのか,それらを見つめ直し,自分自身や社会の変化,震災復興が本学にもたらした意味について一度振り返りたいと考えました。

復興支援活動に携わった教員や卒業生に向けて,「大学の復興 支援活動に参加した学びが,今,どのように活かされているか」 という問いかけを行いました。また,看護学,事業構想学,食産 業学の各学群長には「地域の大学のこれからを考える」をテー マとした特別対談を行っていただき,今後,本学が目指すべき 役割についてメッセージをいただきました。宮城大学の復興支 援活動のうちほんの一部ですが,一度これまでの歩みを振り返 る機会として,また,これからを考える機会としてぜひご覧い ただきたいと思います。

地域の意思,人々の思いと“共に創る“ことで見いだす新しい価値

東北地方は,美しい自然に根差した豊かな地域産業が育まれて きた歴史を持っています。しかし,近代化の進展に伴い,それら の産業の稀少性は失われ,地域産業は衰退し,地域を主体的に 維持していく「地域力」も弱体化してきました。そして,こうし た社会動向の中で,2011 年東日本大震災が発生し,震災復興の 原動力ともなった「地域力」が再認識されるようになりました。

宮城大学は,全民赢三张下载安装,事業構想学群,全民赢三张下载安装のそれぞれ の専門性を活かし,地域に寄り添った復興支援活動を進めて参 りました。全民赢三张下载安装は,震災直後の被災者の救助にはじまり, 仮設住宅における健康支援活動などのさまざまな復興支援活動 を行ってきました。事業構想学群は,被災した地域産業の再興, 集団移転地の計画やコミュニティ形成,被災者の記憶のアーカ イブの形成などのさまざまな地域再生を支援してきました。食 産業学群は,農地の塩害対策や放射能の除染対策,農林水産業 の復興ブランドの開発など,地域の環境対策や食産業の再構築 を支援してきました。

私もこの 10 年を振り返ると,震災復興計画の策定支援のため に被災地に赴いた際,大津波で住居や仕事を失われたにもかか わらず,常に前向きな姿勢で生活再建に挑まれる住民の方々や その「地域の絆」の強さに何度も勇気づけられました。震災復 興計画の策定を支援させていただいた南三陸町では,住民主体 の震災復興計画を実現するため,住民の声を震災復興計画に反 映するワークショップをファシリテートさせていただきました。 こうした震災復興の現場に立ち会いながら,地域の人々が,地 域の意思によって,地域の未来を選択できる「地域主体の計画 プロセス」を構築していくことが重要なのだと強く感じました。

ひとつ例をあげれば,東松島市の公立小学校の再建計画として,教育の未来創造に挑戦した「森の学校」プロジェクトは「被災地の希望を可視化したい」「子どもたちが未来を生きていく出発点を創りたい」そうした地域の思いが強く反映され「森と共生する学校」「地域と共生する学校」をコンセプトに,小学校の児童や教員,行政や地元企業,大学などの地域を支える多様な方々の“共創”によって実現された事業です。地域の重要な共有 財産(Commons)としての学校を再建する「コモンズデザイン」 の取り組みとして先駆的であり,その計画プロセスが高く評価 されました。

宮城大学が,こうした震災復興という使命を果たしていく中 で,各学群の教職員や学生,地域のさまざまなステークホル ダーが連携しながら,被災地の未来創造に寄与できたことを 誇りに思います。

森の学校ワークショップ
C.W.ニコル氏と共に

森の学校を描く子どもたち

森の学校?宮野森小学校

森の学校?森の体育館

これからの10年を共に創っていきましょう

現在,私たちをめぐる世界は,地球環境問題をはじめとするさ まざまな社会経済問題に直面しており,東日本大震災の経験を 活かしながら,新たな未来を模索する時期にきています。宮城 大学はこれからも,震災復興の「学び」や「気づき」を大切にし, 新たな価値創造や社会改革に貢献するさまざまな実践を通して, 地域の未来を共創する「地域未来共創」の実現を目指していき ます。これからの 10 年を共に創っていきましょう。

最後に,東日本大震災を共に乗り越え,震災復興を共に支えて きた関係自治体,地域の企業や関係団体,地域住民の皆様,全 国各地からご支援をいただいた諸団体など,すべての方々に, 改めて感謝の意を表するとともに,これからの東北?宮城の地 域未来共創に向けた,さらなる志の連携をお願い申し上げます。

2021年3月11日

宮城大学理事?副学長
震災10年事業ワーキング長

風見 正三

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